わたし、結婚するんですか?
 





 運転しながら、助手席の洸の指に光る指輪を見た。

 そういえば、洸の母親と中華の店に居るとき、この指輪を頼んだ店から電話がかかってきたんだったなと思い出す。

 自分がこれがいいと思って選んでしまったが。

 いや、洸は違うのがいいのかもしれないと思い、ちょっと悩んでいた。

 あの母親の前で、洸の気に入らない指輪でも渡そうものなら、なにを言われることやらと思い、宝石店から電話がかかってきたことを誤摩化そうとした。

 洸に自分が渡したい指輪を渡し、いまいちなようだったら、洸にもうひとつ、好きなのを選ばせようと思ったのだ。

 金などいくらかかっても構わない。

 洸が気に入ってくれるのなら。

「男が自分の趣味を押しつけるのはよくないというからな」
と渡したあとで、洸に言うと、

「いえ、私はこれ、気に入っています」
と洸は薬指にはまった指輪を見ながら、笑ってくれたが。
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