臆病者で何が悪い!
「内野。今、帰り?」
夜、22時半を過ぎた頃、私が役所の一階ロビーを通り玄関をくぐろうとしているところだった。向こうからコンビニの袋をぶら下げて歩いて来る生田と出くわした。
「これから夕飯?」
「ああ。やっと一息つけたところだから」
少し疲労を滲ませてはいたものの、生田は私を見つけた途端にその表情を緩めた。
「大丈夫?」
今日は木曜日だ。そろそろ疲れもピークに達する頃だろう。
「大丈夫だよ。別に、初めてのことでもないし。それより――」
一瞬、生田が周りを見回してから私に顔を近付けてそっと囁いた。
「メール送れなくてごめん。送ろうと思った頃にはもう深夜になっててさ。そんな時間に送るのも迷惑だろうと思って、いつもタイミングを逸してんだ」
「そんなの、いいよ。全然気にしてないし」
私は慌ててそう主張する。メールだなんて、そんなのどうだっていい。
「……まあ、そっか。そうだよな」
「……生田?」
和らいでいた表情が、少しだけ伏し目がちになった気がした。
「じゃあ、気を付けて帰れよ。お疲れ様」
「うん。生田も、あんまり無理しないで……って言っても無理だと思うけど」
「俺は、眠気には強いからな。じゃあな」
そう言って笑って、私に背を向けた。その背中をつい、見つめる。やっぱり、その背中は少し疲れて見えた。