臆病者で何が悪い!
この週末も生田とは会えないだろうと思っていた。毎夜、生田の退庁時間は、それって結局何時?みたいな時間で。とうてい週末に会えるような状況ではないと、そのつもりでいた。
日曜日の朝、ちょうど目が覚めたと同時だった。ベッドの上のスマホが騒ぐ。着信音を変えたから、今は、激しめなロック音楽だ。
生田だ。どうしたんだろう――?
慌てて耳にスマホを当てる。
「もしもし? どうしたの? 仕事は?」
かかって来た電話に、つい質問攻めになってしまった。
(今、終わったとこ)
「今?」
すぐさま壁にかかっている時計を見る。
9時だ。朝の9時。
(ああ、悪い。休みの日は、あんた、まだ寝ている時間だったっけ……)
「大丈夫だよ。もう起きてたし」
たった今だけど。
「それより、今帰りってことは、徹夜? 本当にお疲れ様」
(でも、これでとりあえず山は越えたから)
生田の声は、疲労が滲み出る重たい声だった。
「じゃあ、今日はゆっくり休んで――」
(――会いたい)
「……え? でも、徹夜だったんでしょう? それにこの二週間まともに寝てないじゃん。今日はゆっくり寝た方がいい。私のことはいいから」
生田の言葉に、私は咄嗟にそう返していた。
(俺は、会いたいんだけど。あんたの顔が見たい。あんたは――?)
そのはっきりとした口調に言葉を失う。
(あんたは、別に、会いたくない……?)
「そ、そんな――」
会いたくないなんて、そんなわけない。
(ごめん。そうだったとしても、今日は俺の希望聞いて。一目でいい。少し会えるだけでいいから。これからそっちに行く)
「で、でも、掃除……っ」
とんちんかんな私は、そんなことを口走っていた。
(いいよ。玄関先で一目顔見たら帰るから)
そう言うと、生田の電話は切れた。本当なら、私が生田の家にでも行ってあげるのが彼女のすることなのかな。でも、そんな彼女面、私には出来ない――。
玄関先でいい、とは言われても。そうはいかないわけで。私は上下チグハグな家着を脱ぎ捨て、慌てて家の中を片付けた。
こんなことなら、昨日ごろごろ漫画読んでないで少しは掃除しておけばよかった――!
床に転がる漫画を本棚に戻し、たたみ終わっていない洗濯物をクローゼットの中に投げ込む。台所は……大丈夫そうだ。トイレ……一応掃除しておこう。
ちょっと、待って。あとどれくらいで着く?
職場からうちまで、およそ40分。
服は? せめて、顔は洗って……ああ、でもその前に、あの出しっぱなしのお菓子を――!
タイムリミットと闘いながら一心不乱に掃除しまくった。