臆病者で何が悪い!
「……別に、まだいたっていだろ? 昼飯一緒に食べよう」
ベッドから声がした。さすがに昼間の明るい部屋で着替えるのが恥ずかしくて、毛布を頭からかぶって洗面所へと逃げる。
「だけど、私、服も昨日のままだし、メイク道具もないから……」
すっぴんのまま外を出歩く気にもなれないし、いろいろと落ち着かない。毛布をずるずると引きずりながら歩く。
「なあ」
「わ……っ」
いつの間に後ろにいたのか、背後から毛布ごと、私の身体を抱き締めて来た。
「今度からいつ泊まってもいいように、ここに自分の必要な物を置いておけよ」
「でも、それじゃ、なんだか生田の私生活を侵害しているみたいーー」
そんなことしたら、私、きっとまた、嫌われるーー。
『そういうの、ちょっと無理かも。それぞれ自分の生活は守ろうぜ』
自分の服を一着達也の部屋に置いておこうとしたら、そう言われた。
『そういうことする女は、なんか図々しくて俺はあんまり好きじゃない』
いつかそんな風に思われることになったら、イヤーー。
「バカ」
毛布にくるまれた私の身体をくるりと回し、毛布に埋もれた顔を覗き込んで来た。
「沙都は、俺の、なんだっけ」
生田の手が私の顔を毛布越しに挟む。私を真っ直ぐに見つめるその表情に見入る。
「……彼女、です」
ここで躊躇っても、また苛められるだけだから素直に答える。そうしたら、生田がふっと表情を緩めて微笑んだ。
「それにしてもそのカッコ、なんだよ。それで、いろいろ隠しているつもり?」
「だ、だって、さすがに裸では歩き回れないから……」
鎖骨あたりで合わせた毛布をぎゅっと握り締める。
「それ、可愛すぎて余計に苛めたくなるんですけど」
「じ、じゃあ、どうしたら」
「可愛い、可愛い」って、いつの間に、私は可愛い女になったのでしょうか。
「苛められたくなかったら、この部屋に沙都のものを素直に置いておけばいいってこと。分かった? 俺の彼女さん」
そう言うと、私の腰に腕を回し抱き寄せて来た。
「なんだよ、この可愛い生き物は」
また、そんな風に私を抱き潰して。
生田さん! あなたこそ、なんなんだ。どんどん生田のイメージが変わって行く。
「いつまででも見てられる。俺の家で飼いたい」
「わ、私、ペットじゃないんで……」
「じゃあ、どうすれば傍に置いとけるの?」
どうすればって――。
その気持ちは本当のもの?
そんなことばかり言っていると、いくら私だって信じちゃうよ。
ダメ女だって、女なんだって思いたくなる。
「いつでも、傍に置いておきたい……」
冗談交じりだった生田の声が、いつの間にか真剣なものになって、抱きしめる腕に力を込める。私も、こうして近くにいたいと思うよ。