臆病者で何が悪い!

「そうだ。生田、係長おめでと」

それを言っていなかったことに気付いて言葉を続ける。今さら感は拭えないな。でも、そんなこと微塵も気にしていないかのような生田の声がした。

「……あれ、出来るな」

「ん? あれ?」

生田がニヤリとして私をちらりと見たのを、見つめ返した。

「おまえが持ってた本。なんだっけ、『冷徹上司は私だけの王子様』だったっか?」

「ちょっ、そんなことまで覚えてないでよ! それに、私は生田の係じゃないんだから、直接上司になるわけじゃないしっ!」

頭の良い人って、そんなどうでもいいことまで覚えちゃうの?

「それもそうか。なんか、つまらないな」

ふっと表情を崩して生田が微笑んだ。

くーっ――!

そうやってちょっと微笑むだけで、こっちの心をかき乱して!なんだか無性に悔しい。
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