臆病者で何が悪い!

「……もう、寝た?」

部屋の明かりは既に消してあって、枕元のランプだけが点いている。

「寝てないよ。おまえが来るの待ってた」

横たわる生田が私の方へと身体を向けてくれた。生田が寝ている布団の隣の布団に、身体を滑り込ませる。
本当は――。

「今日、楽しかったな」

「うん。生田のおかげだよ。ありがとね」

横たわって、私も生田の方を向く。こうして隣に寝ているのに、生田の部屋で一緒に寝た時より遠い身体。顔を見合わせていても、その距離がもどかしい。だけど、生田は私に手を伸ばして来ようとはしなかった。

「喜んでくれて良かった。安心した」

オレンジ色の明かりが生田の顔を照らす。その泣きたくなるほど優し表情に、またも私は泣きたくなる。

今日は、一体何度泣きたくなればいいんだろう――。

「……まだ、気にしてるのか?」

「え?」

生田が心配そうに私を見つめるから、不思議に思って見つめ返す。

「おまえは、自分を低く見過ぎだよ」

「生田?」

切なそうに微笑む生田が何を言いたいのか分からない。

「身体くらい差し出さないと今日のこの場所には見合わない、なんて思った?」

「それは……」

「そんな風に思ったから、あんなに必死に俺に謝ったんだろう? 俺が不機嫌になるとでも思ったか」

そう言うと、生田が身体を正面に戻し天井を見つめていた。

「まだ、足りねーな。俺は……」

それはまるでひとり言のようで。私に答えを求めているものではないように思えた。
ただ生田を見つめる。

「自分ではいくら大事にしているつもりでも、それがおまえに伝わっていないんじゃ意味がない」

自嘲気味に呟く生田に、私は思わず身体を起こす。

「生田、聞いて」

そして、必死に生田の目を見つめた。
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