臆病者で何が悪い!


で――。なぜか、私はビアガーデンで生田と向かい合っている。

すたすたと歩いて行ってしまう生田に付いて行かざるを得なくて、たどり着いた場所はそこから歩いて3、4分のところにあったビアガーデンだった。

オフィスと店舗が入っている複合ビルの最上階が、夏季限定のビアガーデンになっていた。この場所からは東京駅が見える。少しずつ陽が落ちて来た空は、幻想的な紫色をしている。夕方から夜へと移り変わる中吹く風には、秋の気配が混じっていた。

なんで、ビアガーデン?
どうして私は、生田と向き合ってビール飲んでいるんだ?
どうして生田は、私をこんなところに連れて来たの?

疑問だらけの頭で、座っていた。

「なんだよ」

一人あれやこれやと考えていると、生田をじっと見てしまっていたらしい。
生田がジョッキを手にしながら、横目で私を見る。

「生田ってさ、あんまり人に興味ないタイプだよね?」

人を遠ざけるタイプでもないけど、積極的に関わろうとするタイプでもない。

「だから?」

「私と二人で飲むくらいなら、一人の方がいいんじゃないかと……」

こうして二人で向かい合ったところで、会話が弾むはずもなく。生田にとって私は、特に親しい同期というわけでもない。何のメリットがあるのかさっぱりわからなかった。

「ビアガーデンって、一人でくる場所じゃないだろ」

「ああ、なるほど……。それで」

と納得した気になってみたものの、やっぱり疑問だ。

あなたなら、一緒に来てくれる女とか、絶対困ってないよね――?

まあ、いいや。
”どうせヒマ”なのも”家に真っ直ぐ帰る”のも”家帰っても特にやることない”のも本当だし。

それに。さっきの偶然の再会で、一人でいても気が滅入って虚しさでいっぱいになっていただろう。相手が生田なのはともかく、こうして空の下ビールを飲む方が気が紛れる。そう思って、刻々と変化していく空を見上げた。

いつものように誰かの世話をしなければならないわけでもない。人の話を聞いて、どう答えればいいか考える必要もない。周りの様子を見まわして、オーダーを取る必要もない。

だから、いつも以上に飲むペースが速くなっていた。まあ、一番の理由は、生田と二人だからなんだけど……。

話をするより飲むばかりで。次から次へとビールを飲みまくっていた。

何より、外で飲むのはやっぱり気持ちよくて。すっかり空は暗くなったけれど、星空の下というのは開放感と癒しをくれる。特に会話はなくとも、風に吹かれてビールを飲んでいるだけで十分心地いい。

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