臆病者で何が悪い!
ちらりと生田の様子をうかがってみる。生田はそもそも人のことを気にするようなタイプではないので、見渡せる夜景を眺めながら気ままに飲んでいる感じだ。こんなに喋らずに誰かと飲むなんて、まずない。まさに初めての経験だけれど、意外に居心地悪くはなかった。
別に頑張らなくたっていいんだ……。
ほろ酔い気分で、そんなことを思っていた時だった。
「すみませーん! 良かったら一緒に飲みませんかぁ?」
お酒が入って少々テンションが高くなっていると思われるOL風の女性二人組が、私たちに声を掛けてきた。
正確には”生田に”だと思うけど。
こうして向き合ってひたすらにビールを飲みながらも改めて思った。
悔しいけど、カッコイイ。二重の切れ長の目は冷めたい感じがするけど、それがカッコいいオーラを放っているし。超絶クールなイケメンってとこか。世のドM女性たちはこの男を放っておけないかもね。そりゃあ、お近づきになりたいと思う人もいるでしょう。いいですねー。勝手に異性が寄って来る人は……。
心の中で悪態をつきつつ、頬杖をついて事の成り行きを見守ることにした。
さあ生田君、どう出る?
いくら生田とは言え、酒も入っている。
多少そのガードも緩んでいるでしょう。それに。生田を見る目が輝いているその女子たち、かなり綺麗だ。
そんなことを思って、他人事のようにしていたら、超絶冷たい声が放たれた。
「普通、女性と二人で飲んでいたら声を掛けるの遠慮するものじゃないですか?」
声だけじゃない、いつもの冷めきった表情にさらに輪をかけた冷たい目だ。
「え……?」
そんな目で見るもんだから、女子たちが怯えて固まっている。私までびっくりして、心の中で女子たちと「えっ?」とハモってしまった。
「ちょっと、生田、私は別に構わないけど――」
「すみませんが、彼女と飲んでいるので」
咄嗟に口を挟んでしまった私の言葉を追いやり、生田がぴしゃりとはっきりとそう言ってしまった。
「ご、ごめんなさいっ。デート中だとは思わなくて!」
そう言って頭を下げると、女子二人は逃げるように去ってしまった。