蜜月なカノジョ(番外編追加)

「最近杏さんってやけに綺麗になってません?」
「そ、そんなことは、全然っ…!」
「えー? でも私だけじゃなくて色んな人が言ってますよ~? シェフの青柳さんとかいっつも杏ちゃんのことばかり話してて」
「えっ?」

聞き捨てならない言葉に俺のこめかみがピクッと動く。青柳は厨房担当の20代後半の男だ。杏が入店した頃から可愛い可愛いと騒いでいたが、会話することすらままならない相手に途方に暮れている、そんな状態だった。
いい加減諦めたかと思っていたのだが…腕も確かだし性格もいい奴だが、杏が絡むとなれば話は別だ。

「もしかして彼氏とかできました?」
「えっ!!!」
「あ~、その反応はやっぱりそうなんだぁ~!」
「え、いえ、あのっ…」

どうしたものかとテンパる姿が容易に浮かんで自然と口元が緩む。

「でも杏ちゃんってちょっと男の人が怖いみたいなとこなかった?」
「あー、そういえばそうでしたよね。男性スタッフともほとんど話さないですもんね~。彼氏ができたってことは克服できたんですか?」
「え、えっと、その…」
「あっ、もしかして初カレってことですかぁ?!」
「えーーっ! そうなの? 杏ちゃんすっごく可愛いのに意外! 学生時代とかいなかったの?!」

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