蜜月なカノジョ(番外編追加)

尋ねた本人の言葉などろくに聞かずにキャーッと四方八方から飛んでくる軽快な会話に呆れかえる。
全く、女ってのはなんでこうも噂話が好きな生き物なのか。
葵が引き止めた狙いはわからないが、いい加減杏が可哀想になって助け船を出しにいこうと右手を差し出した、その時____


「い、いた…のか、いないのか、自分でもよくわからなくて…」


「えー、何それっ、まさか体だけのお付き合いだったとか言わないよね?」
「からっ…?! ち、違いますっ! そういうのでは、決して…!」

まさかの杏の答えにフリーズした。

「え、男の人が怖いのってもしかしてその時の彼が原因とか?」
「………」
「…あ、でも今すっごく幸せそうだもんね。いいな~、きっと素敵な彼氏ができたんでしょう?」

シーンと響いた沈黙にそれ以上は踏み込むべきではないと感じたのか、それまで騒ぎ立てていた女達が慌てて取り繕いだした。
その後は話題を変えてまた賑やかに会話が繰り広げられていたが、もはや俺の頭にはどんな言葉も届いてはこなかった。


杏に……男がいた…?


じわりと嫌な汗が手のひらに滲み、ドクドクと心臓がうるさく音をたてる。
ふと視線を感じて横を見れば、同じように「まさか」の顔でこちらを見ている葵と無言のままで視線がぶつかった。

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