蜜月なカノジョ(番外編追加)
「ちょっと~、その顔何とかならないの?」
「…今度は何よ。顔を合わせれば文句ばっか言ってうるさいわね」
「言いたくもなるわよ。ずーっとデレデレしてたかと思えば今度はそんな辛気臭~い顔されてちゃあさ」
「し、辛気臭い…?」
思わず自分の顔を押さえると、葵は自分で気付いていないのかとばかりに心底呆れかえっている。
「聞かなくてもわかるけどさ。…あの時のこと気にしてるんでしょ?」
「……」
葵の言う「あのこと」とは一つしかない。
あの日、立ち聞きする形になってしまったスタッフとの会話で偶然知ってしまった事実。
…杏には昔付き合っていた男がいる。
本人に聞いたわけではないしもしかしたら勘違いかもしれない。
だが、あの時の杏のうろたえっぷりを思い出すに、おそらく勘違いなどではないのだろう。
結局葵が言いかけていたことも聞かないまま、俺は別の仕事場へと逃げるように直行してしまった。