蜜月なカノジョ(番外編追加)
「あの時あんたに言おうとしてたことだけどさ。ちょうどあの子達が話してた会話の中にもあったけど…シェフの青柳君、彼が最近やけに張り切ってるのよ」
「…何を」
「だから、杏ちゃんに告白するんだー! とかなんとか言って。とは言ってもさすがに今のままじゃふられる自覚があるらしくて、とりあえずは少しでも接点をもてるようにあれこれ奮闘してるみたい。ほら、女の子達も言ってたけど、最近の杏ちゃん急に綺麗になったでしょ? だから余計に焦ってるみたいなのよ」
「……」
「まさかその綺麗にさせてるのがこーんなに身近にいるとは夢にも思ってないだろうけどねぇ~?」
ポンポンと面白そうに俺の背中を叩くと、葵はロッカーからエプロンを取り出した。
「気になるなら聞いてみたらいいじゃない」
「…え?」
「杏ちゃんの過去のこと、気になって仕方ないんでしょ?」
「…バカ言うな。下手すりゃ彼女の傷を抉る可能性だってあるんだぞ。くだらない嫉妬くらいでそんなことができるわけないだろ」
「あ。嫉妬してるってあっさり認めた」
「……」
「あはは、ウソウソ。怒んないでってば」
ジロッと鋭い視線を飛ばした俺をどうどうと両手で制す。
ふざけんな。
こっちは冗談に付き合ってる心の余裕なんかこれっぽっちもないんだよ!