蜜月なカノジョ(番外編追加)

「…よかった。私だけじゃなかった」
「え?」
「私も、この部屋に入ってからずっと緊張しっぱなしで…。ナオさんはいつも通りなのに私だけ子どもみたいで恥ずかしいって思ってたから…」
「全然いつも通りじゃないって。さっきも言ったとおり誤魔化すのがうまいだけ。杏と目が合うだけでも心臓がやばいことになってるから。何なら直に触ってみる?」
「えぇっ?! あっ…!!」
「危ないっ!!」

思わず中腰になった拍子にグラスが倒れかけて慌てて二人揃って手を伸ばした。
重なり合うようにしてキャッチすると、同時にほーーっと安堵の息が溢れ出る。
キャッチといい溜め息といい、息の合った動きに気が付けばどちらからともなく吹きだしていた。

「はははっ、なんていうか…似た者同士だな、俺たち」
「ふふふっ、そうみたいですね」

私の手に重なっているナオさんの手にギュッと力が入った。
少し前なら心臓が飛び出そうなくらいにドキドキしただろうけど、今はまた違った意味でトクンと胸が高鳴る。

すぐ近くにはナオさんの顔。
このままキスしても全然おかしくない空気だけど…

「…とりあえずは食べようか」
「…ですね」

互いに顔を見合わせてクスッと笑うと、ゆっくりと手を離して再び料理に舌鼓を打ち始めた。


…長い夜はまだ始まったばかり。

< 294 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop