蜜月なカノジョ(番外編追加)

「よかった…あのまま杏がいなくなったら、俺…じゃなくて私は…」

ぽろっと「男」が出てしまったナオさんは見た目以上に動揺しているらしい。

「も~、なんなのその乱れっぷりは。いくらなんでもあんまりじゃない? あんた今日大事な商談があるって言ってたでしょう!」
「葵…いたのか…」
「ちょっとそれどういうことよ?! 全く失礼しちゃうわね! 杏ちゃん、こんなメンドクサイ男女なんて捨ててやったらどーお?」
「えっ?!」
「ちょっ…あんた何言ってんのよ! 冗談でも本気でも許さないわよっ!!」
「あたたたたっ! 何すんのよ、離しなさいよっ!!」

キーキー子どものように取っ組み合いの喧嘩を始めた2人を前に唖然としてしまう。いつもの大人然とした彼らは何処へ?
…って、そうじゃなくて!

「ちょ、ちょっと…! ナオさん、落ち着いてください! ナオさんっ!!」
「…っ!」

背中を掴んで止めに入ると、触れた途端ビクッとナオさんの体が揺れた。
そうしてギギギ…と人形のように驚いた顔でゆっくりと私に振り返る。

どうしてそんな顔をしているんだろう?

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