春色のletter

ハルの方は、代わり映えのない生活のせいか、少しずつ昔話が増えてきた。


でもそれは、お互いの記憶の隙間を埋めていくので、なんとなく懐かしく、気持ちがよかった。


あの頃のふわふわした気持ちもよみがえり始めたけど、手紙だから安心だった。


『ハル、高校の時、別れてからお互いどういう風に接してたか覚えてる?』


そう書いたことへの返事は、


『ごめん。なぜか俺、良く覚えていないんだ』


だった。


それは、私には同じように感じられていたから、うれしかった。


人はきっと、残したい記憶は美化して残していくけど、嫌なことは記憶に止めない。


それに、きっと、あやふやな気持ちが、その記憶を曖昧にしているのだと思う。


はっきりと、もう関係ないと思っていたのなら、その記憶は残っているだろう。
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