Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
宮地だって同じはずだ。
私とは歩み寄れないってわかった上で、それでも〝付き合おう〟って言ってくれただけで、充分だ。
私の片想いは、充分報われた。
「困らせたくて好きになったんじゃないのに、結果的にそんな顔させちゃってごめん」
黙ったままこちらをじっと見つめる宮地に笑顔を向ける。
沈黙が落ちるのが怖くて、わざと明るく続けた。
「ちゃんと諦めて、今度は、バレンタインにホールケーキあげても喜んで食べてくれる人を探すから安心して」
真面目な顔で聞いている宮地に視線を返したあと、「この話はこれでおわりね」と立ち上がる。
うしろで、キィ……と音を立ててブランコが揺れた。
おしりをパンパンと軽く叩いてから、まだ柵に座っている宮地に「じゃあ、お疲れ様」と言い歩き出すと、うしろから呼び止められる。
「唐沢。待って」
同時に手を掴まれ振り返ると、宮地が私を見下ろしていた。
「なに?」
もうこれ以上話はないはずだ。
私も宮地も謝って、終わった。
なのに、こんな気まずそうな顔をして呼び止められる意味がわからずにいると、宮地が落ち着かない様子で口を開く。
こんな動揺しているような宮地は珍しい。
「俺にはまだあるから。話したいこと……っていうか、言いたいことが」
「……なに?」
わずかに緊張しているようにも見える顔を見上げて聞くと、宮地は一度目を逸らし……眉を寄せる。
それから、困ったような笑みを私に向けた。
「俺、たぶん、忘れられない。唐沢が、〝好きとかそんな軽く言わないで〟って言ったときの顔」
ふっと情けない顔で目を細める宮地が私を見つめる。
そこには、今までの宮地にはなかった感情が込められている気がして……目が逸らせなかった。