Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「もう決まった子でもいるような条件出してきたなぁ……。まぁ、でも、条件聞く限り、どこにでもいそうな普通の子だし、ここは俺がひと肌脱いでしっかり涼太の好みのタイプを探してくる……」
「あの……!」
遮るように声を出すと、おじさんと涼太の視線が私に集まる。
隣に座る涼太が私を見ていることに気付きながらも、おじさんを見てゆっくりと口を開いた。
「おじさんの言うように、私はどこにでもいるような普通の女ですけど……それでも、涼太の隣に立つ権利を、他の子に渡したくない」
突然、こんな話をし出したからだろう。驚いた様子のおじさんを見て続ける。
「おじさんが探せば、もっと素敵な女の子が見つかるのはわかってます。私は、ずっと自分の気持ちだけでいっぱいいっぱいで、涼太をたくさん傷付けちゃったし……それなのに今更涼太を好きだなんて、勝手すぎるって自分でも思います」
はぁ、と吐いた息が、緊張で震えていた。
「この色紙の女の子のほうが、涼太にふさわしいのかもしれない。
でも……私、涼太が好きです。私じゃダメでしょうか。涼太の相手……恋人に、なりたいです」
真剣な思いを声にすると、おじさんはしばらくキョトンとしたまま動かなくなってしまった。
図々しいお願いだっていうのは自分でもわかっていたから、やっぱりこんなこと言うべきじゃなかっただろうかとハラハラ心配し始めていたとき。
おじさんが顔をくしゃっとして笑う。