Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「俺、ダメなんだよね。私を一番に見て!っていう感じの子。なにを一番大事にするかは俺が決めることなのに、強制されるのが耐えられない。
サッカーだって言っても、どこか疑ってるような感じだったし。そういうの居心地悪いだろ」
宮地の言いたいことはわかる。当たり前のことだ。
でも……宮地みたいに世界が広くて自由なひと相手だと、想われていないんじゃないかって不安になる彼女の気持ちのほうに共感してしまって上手く言葉が返せなかった。
「唐沢? どうかした? あ、もしかして俺、説教される感じ?」
黙った私を不思議に思ったのか。
お説教なんて言葉が出るってことは、宮地も自分の恋愛スタイルについて思うことはあるんだろう。
同期会があるたびに鶴野にも色々言われてるし。
「別に。でも、せっかく好きになってくれたんだし、もう少し……」
〝もう少し真剣に考えてあげた方がいい〟
言おうとした言葉が途中で詰まる。なんだか、自分のための言葉に思えてしまって、言えなかった。
真剣に考えて、だなんて私が告白したときそうしてほしいって言っているみたいに思えて。
「相変わらず嫌な性格してんなー、宮地は」
急にそんな声が聞こえてきて振り向くと、給湯室を覗くようにしている松田さんの姿があった。
さっき戻ってきたのは松田さんだったらしい。
ニヤッと笑った松田さんが宮地を見て「そのうち女が店頭乗り込んでくるかもな」とからかうように言う。
松田さんは、宮地や私よりも二年先輩だ。明るくて、営業の中ではダントツで親しみやすい。
「松田さんだって人のこと言えないでしょ。聞いてますよ。少し前までは俺みたいだったって」
軽く返した宮地に、松田さんが営業鞄を床に置き、ネクタイを緩め笑う。