信じることはとても愚かで美しい。



家に入ってソファーに座ると、カサッという音がした。


ポケットから取り出した紙を見て、その存在を思い出す。


『双竜の元姫、篠原菜緒は裏切り者。』


紙を電球の下にかざしながら腕を伸ばす。


「すっかりこの存在忘れてたよ。」


はぁ…とため息をついて再びポケットに入れる。


謎だけど。


「とりあえず倉庫、行きますか…」


紙の存在を思い出して重くなった足取りで家を出る。


ガチャッとドアを開けてエレベーターで一階まで降りる。


ガラス張りのエレベーターで夜景を見ながらぼーっとする。


部屋が六十階建てのマンションの最上階だから、エレベーターから見える景色は綺麗で。


いつもは綺麗だなぁなんて思って見るけど。


今日はそんな気分にはなれない。


「あー…重いなぁ」


足取りも。


心も。


全部。


「はぁー…」


ため息が止まらない。



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