【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「叔母上は、自由な方やな……」


京子がそう呟いたことで、沙耶は、何かに気づいたように口を開いた。


「えっと……つまり……」


相馬が言うように、聡い娘なのだろう。


流石、相馬の目のつけた黒橋グループの一人娘だというところか。


「陽希さん、陽向さん、春馬さん、千華さんが、千波さんと陽介さんのお子様で、総司さんと和子さんの御両親は別にいらっしゃると?」


「そうそう」


「理解早いなぁ……」


本当に、流石だ。


「でも……あれ?あ、なるほど」


ブツブツと呟いて、沙耶は納得したように手を弾いた。


「あれですね、えっと……名前が出てこない……」


「誰のこと?」


京子が尋ねると、沙耶は、


「えっと、彼です、彼……相馬達のひいお祖父さんの……」

と、曖昧に言う。


「ああ。お祖父様か」


沙耶が言っているのは、俺たちからすれば祖父。


相馬たちからすれば、ひい祖父さんに当たる人だった。


御園家の中で、”異端“と呼ばれた人間だ。


「そうです。すいません、名前が出てきませんが……彼、二度、結婚なされましたよね?」


御園家で、”異端“と呼ばれる人は決まっている。


人生上で、結婚を二度以上、結婚をした人間を指す。


祖父は、本気で愛した人との結婚を反対され、一度目は政略結婚だった。


その時に生まれたのが、俺たちの父、陽介の異母兄に当たる――御園稜。


祖父の政略結婚相手であった相手は、儀式を行ったあと、魂を抜かれたように、床に伏し……一度の儀式で、妊娠し、子供を産んだあとに世を去った。


「よく知っているな」


「一応、嗜みで。上の人間については、幼い頃に一通り、父によって覚えさせられましたから」


どうなってるんだ、黒橋家。


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