【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「はぁ、はぁ……」


発作を起こす沙耶。


唇を重ねてみるけれど、今までのようには、発作は止まってくれなくて。


ぼんやりとした目を俺に向けた沙耶は、首を小さく横に振った。


苦しげに細められた、瞳には大きな涙が溜まり、キスだけではどうしようもないと察した俺は、すぐに酸素マスクを沙耶につける。


すると、沙耶が微かに呟いた。


「……っ、たし、いいから……こ、ども……」


“私のことはいいから、子供を助けて”


そう、沙耶から訴えられても、俺は頷くことはしなかった。


沙耶も子供も助ける。


そのつもりだった。


「……ヤバイな、頭が見えてきてる」


医師として白衣を着、沙耶を診ていた直樹さんが呟く。


「破水もしているし……ねぇ、分娩室は空いてる?」


看護師に確認を取りながら、看護師たちは走り回る。


俺はその間、沙耶の手を握って、願うことしかできなかった。


< 453 / 759 >

この作品をシェア

pagetop