【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
■陽向side□




春馬が帰らなくなって、20年。


『お父さん、お父さん、どこに行くの?僕を見捨てないで!』


小さな足跡が、春馬を追いかける。


春馬は困ったように笑って、


『お母さんを守ってあげて』


少年に、もっとも残酷な言葉を吐く。


少年は律儀に守り、重い棘も心で受け止めて、二年間。


『死んじゃたんだー、……ははは、あはははっ!』


僅か、8歳の少年は壊れてしまった。


母親の棘が、父親の期待という名の石で押し潰され、埋め込まれて、完全に、それが根付いたとき、彼は自分を封印した。



誰が間違っていたんだろう。


何が、正解だったんだろう。


なにも、分からない。


分かるのは、相馬にとって、京子にとって、彼ら、兄弟にとって、あの二人は、自分勝手で最低な親だったということだけ。


彼らの産み出した負の連鎖は、相馬に受け継がれ、人形のように笑う相馬の意思は、消えていく。


その中で。


『相馬!』


彼に手を差し伸べる、光。


彼が求め続けた、彼だけの愛。


今、彼の心に深く刻まれた記憶が、棘が、箱にしまわれていく――……。

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