【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「春馬、お帰り」


そう言って、陽希は優しく春馬を迎え入れるけど、俺は許さない。


あの後、どれ程に相馬が傷ついたのか、こいつはわからないといけない。


「ほら、陽向も……」


「……お帰りなんて、言わない。言うわけないだろ?子供を捨てて逃げた、弟なんかに」


冷たく、吐き捨てる。


すると、莉華が俺を止めた。


「駄目だよ、陽向。そんなことを、言っちゃ駄目。春馬くん、戻ってきたじゃん。頑張って、罪と向き合おうって、この家を受け入れようって、帰ってきたじゃん。だから、『お帰り』って言ってあげなくちゃ、駄目。陽向が許せないのは、分かるよ。だって、相馬のことを育てたのは、陽向みたいなものだから」


俺の妻は、優しく、俺の頭を撫でる。


「分かるよね。何が、和子さんを狂わせ、殺したのか。春馬さんのせいじゃないのは、陽向はわかっている。ここで生きてきた、陽向ならわかるはずよ。だから、相馬を身を張って、守ろうとしたんだ」


誰も、信じなかった幼い子供。


『おいで、相馬』


僕に縋りついた、16も下の弟の子供。


「相馬を自分のものにしようと思って、春馬は戻ってきたんじゃない。死ぬために、ここから、消えるために……すべてを話に来たんだ。大体、そんな器用なことができるような子供じゃないじゃない」


顔をあげると、目に映ったのは、幼い子供。


俺の腕のなかで、何度も泣きじゃくった、弟。


そして、守ろうとした息子同然の相馬と同じ顔で、あの日、相馬が壊れ、俺が『おいで』と言った日の相馬と、春馬は同じ目をしていた。


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