【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「っ……めんな………ごめんな……総一郎……っ」
俺は、無力だった。
まだ、16歳のガキだった。
小さな命のひとつすら守れない、そんなガキで……大人な兄さんたちみたいには、なれなかった。
「ねぇ、死ぬよ?」
もう、やめてほしい。
そう、和子に告げると、和子は笑顔でそういった。
「私を抱いてよ、愛してよ」
わかっているんだ。
和子は、“俺”のことなど見ちゃいない。
“俺”を通して、“あの人”を見ている。
でも、死なせたくなかった。
生きていてほしかった。
これが、俺の偽善的な優しさ。
そして、取り返しのつかないことを始めてしまうという、始まりの合図。
そんなことに、幼くて、愚かで、兄さんたちみたいに大人ではなかった俺は、俺に初めて、美しさを教えてくれた女だったから……だから、俺にできることは、と考えて……そんな理由で、偽りでも、和子を愛してしまった。
“あの人”になりすまして、“嘘”の愛情を告げて。
わかっているんだ。
わかっていたんだ。
嘘なんかじゃない、俺のことを見ていなくても、俺は和子を愛してた。
心のどこかで、優しかった、綺麗だった頃の和子が戻ってくるのを信じてたって。