【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


『千歳ー!』


よく遊びに来ていた、人間よりの男の子。


お祖父ちゃんが、当主の家出息子で、里の存続権をすべて従兄弟に放り出し、人間に仕え出したという話で有名な永久さんだと聞き、私は大興奮。


だって、物語的にすごく美味しい。


里で一番の力をもち、期待され、他の妖怪と喧嘩ばかりしていた永久さんは、ふと、何の前触れもなくいなくなり、人間……薫の祖父である、雪さんに仕え始め、人間と結婚し、天狗ということを隠したまま、人間に恐れられる存在となった人。


家族や仕事上、親密的な相手、仕えている焔棠家以外には、妖怪ということを隠し続ける彼の姿勢はとても格好がよく、”千羽“という家を開いたときいたときは、里が大騒ぎをしたらしい。


あと、人間と結婚したときか。


私は、その少しあとに生まれたので、その時の騒ぎは知らないけれど(畜生!もう少し、早く生まれたかった!)、滅茶苦茶な人物であることに違いはなく、彼を知っている人たちの語る瞳が優しかったので、勝手な妄想を抱いていた。



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