【完】☆真実の“愛”―君だけを―2





病室に駆け込むと、相馬が沙耶を抱き締めていた。


尋常ではないくらいに、震えていた。


今日は、5月8日。


相馬が生まれた日であり、


和子さんが自殺した日である、今日。


この世で、最愛なる沙耶を喪うことを、相馬は怯えている。


「相馬」


相馬の肩に手を置いて、


「っ……直樹さん」


震えるその声を聞き、僕は微笑んだ。


「沙耶は生きる。絶対に生かす。だから、そんな顔をするな」


ハッキリと、言ってやる。


もう、気にするのはやめだ。


手術がいるのなら、必ず、成功させる。


様子見なら、とことん、診てやる。


時間はあるのだから。


沙耶は、生かす。


生きたいと願い、泣いた少女を、このままになんてはしておけないから。


「……春馬兄さん、久しぶり。よく、帰ってきたね」


この部屋に駆け込んだと同時に視界に入ったのは、相馬たちの父親であり、逃げ出したはずの兄的存在だった春馬。


そんな彼は、とても痩せていて。


長年の苦労が、わかるほどだった。


そんな彼を責めようなんて思わず、僕はただ、微笑む。


『大丈夫だよ』……その言葉が、伝わるように。


「っ……沙耶さんを、助けて、やってくれ……!」


春馬の、絞り出す声。


「うん、任せて」


今なら、“使える”だろう。

拒まれることは、ないはずである。



< 571 / 759 >

この作品をシェア

pagetop