【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……相馬?」
点滴を外され、今なおも呼吸乱し、苦しそうな沙耶を強く抱き締めた相馬は体を震わせながら、沙耶に優しくキスを落とす。
今まで沙耶を救ってきた、一次的のしのぎ。
「……相馬」
無言で首を横に振る彼は、なんとも言えない表情で。
「……っ、これでっ、沙耶が死んだら……俺のせいだ……」
自分を静かに責め立てる。
「頼む。頼むよ、直樹さん……沙耶を、助けてくれ……」
常に母親の後を追い、泣いていた少年は大きくなった。
容姿、才知、家柄……何もかも、申し分のない青年に。
だが、ひとつだけ、欠点があった。
人を愛すと言う意味を、忘れ、放棄していた相馬。
そんな、相馬の感情を甦らせ、誰よりも愛されたのが、黒橋沙耶。この子であった。
沙耶ちゃんは、昔から、聡明だった。
『先生、言葉を濁さなくていいよ。私、二十歳になったら、死んじゃうんでしょう?』
僅か、8歳で、そう尋ねてきた沙耶ちゃんの瞳には、絶望なんてなく。
『大丈夫。死ぬのは、怖くないよ。神に背くのも、運命とやらに背くのも、怖くない。だって、天国では、朝陽がいてくれるもの』
あっさりと、自分の死を認める少女。
あれが、あんな目をした沙耶ちゃんが怖かったのを、今でも、覚えている。