【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
『えっ……!?』
里の人間がみんな、見るなかで。
彼は柔らかく、微笑む。
『必ず、守り抜きます。安心していいですよ。ですから、私と共に人間界へ来ていただけませんか?』
目を、見開くことしかできなかった。
彼の言葉の真意に気づくことができずに。
ボーッと、突っ立っていると。
『……貴女からの気持ち、真面目に考えた結果ですけど……どうでしょうか?』
彼は立ち上がって、私に手を差し出してくる。
私は現実感を一気に感じ、固まった。
『……よろしくお願いします』
『はい』
自然に、声が出て。
そっと、抱き締められる。
もう、恥ずかしくて。恥ずかしくて。
そんなに私は分かりやすかったのか。
彼に考えさせてしまうほど。
『真っ赤。変わりませんね、貴女は』
おかしそうに、笑う彼。
『やっと、逢えた……』
呟く、切な気な声。
彼のその切ない声の意味を聞いたのは、16歳の誕生日で。
同時に貰った記憶は、私の相模への想いを深くさせた。
『……な、なにか、私に言うことは?』
前世でされた、悪戯の謝罪。
それを聞く前に、私は殺されたから。
謝ってくれると思った。
けど、間違いで。
『愛していますよ。それ以外に特別にあなただけに言うことはありますか?』
ちょっとした冗談だったのに、相模は何倍にもして返してきたから。
『……私も、大好き……』
甘酸っぱい、記憶。
前世のぶんも、この瞬間を大事にしていこうと思った。
そんなときに、言われた転校。
そして、沙耶たちとの出会い。
……これも、巫女の“宿命”だろうか?