【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「ついてる」
頬を拭ってやると、見せてくれる笑顔。
「ありがとう!」
まだ、齢19の沙耶は、意図も簡単に俺の心を揺るがす。
そして、言うんだ。
「何かあったら、言ってね」
その一言を。
「……?」
「だって、最近、様子が変だもん。私の心情と同じっぽいし、もう、言わないけど……本当に気にしないで。私は、幸せだからね」
左の感覚をほぼ、失って、幸せ?
もう、前みたいに走ることもできないのに?
「逆に、命を失うって言われてて、左だけで双子を抱き締められるんだもん。十分よ」
確かに、そういう考えもあるかもしれない。
けど、それは……
「だから、感謝してる。私に双子を授けてくれて、ありがとう、相馬」
俺の過ちでさえも、笑顔を受け止める沙耶。
「だから、何かあったら、言ってね。少しばかりだけど、お礼もしたいし。手紙にも書いてた通り……私はどこにいても、相馬の味方だからね」
美味しそうに頬張りながら、いってくれるその台詞。
俺は、ため息をついた。
簡単に俺の心を奪い、揺るがして。
それでいて、俺に幸せになれと言う。