【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「大兄ちゃん」


沙耶はそっと、俺の手をとり……


「帰ろ?心春が待ってる」


と、言った。


「……」


何も言えなかった。

心春は今、自由になるべきだ。

なのに。


「待ってるんだよ?大兄ちゃんを」


だから、帰ろう?と、沙耶は言う。

首を縦に振れないのは、恐怖からか。


「心優さんも」


沙耶は微笑んで、手を差し出す。

心優は躊躇っていたが、沙耶の


「自由に生きたいのなら、とって?」


という言葉で、力強く、手をとった。


恐らく、自由は、心優の望むもの。


心優が手をとらないはずがなかった。


「……私は、大兄ちゃんを取り戻しに来ました。思わぬ、収穫もありましたが……」


沙耶は、心優の手をぎゅっと握った。


「では、失礼致します」


そして、去っていこうとする沙耶を見て、祖父は焦ったように叫んだ。


「なっ……ま、待て……っ!」


「……傷害罪」


ぼそり、沙耶が呟く。


「私に知らないことはない。そう、言ったでしょう?」


すべて、沙耶は知っている。


どこでそんな情報を仕入れたのかとか、聞くまででもなかった。


沙耶のちょっとした一言ですべてを理解した祖父は、呆然と座り込む。


それを冷たく見下ろした沙耶は、


「もう、入ってきて良いわ」


と、扉の外に向かって、そう言った。


「……お前にしちゃ、手加減したな」


「でしょ?だって、ねぇ……?」


現れたのは、沙耶の夫である相馬。


感心する相馬に沙耶は微笑んで、沙耶の頭を撫でる。


沙耶は満足そうに大人しく撫でられ、そして、視線を相馬の背後に投げた。


「連れてきたぞ。お前に頼まれた通り……」


「どこにいたの?」


「何、ここから、そう遠くない場所だ。監禁状態のようだった。警備がすごくてな……」


「よく、連れ出せたわね?」


「そこは……家の権力」


「やっぱり?」


笑う、沙耶。


(……何が、起こっている?)


祖父は腰が抜けたのか、沙耶の夫である相馬を見上げて……


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