【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


雷紀もまた、両親に愛され、幸せな子供であった。


しかし。


「妃……っ!!」


雷紀が8歳の時、妃は鬼籍に入った。


紀一は後を追いそうなくらいに落ち込み、雷紀はそんな父を支えながら、勉学に励んだ。


そして、12の時。


政略で、藤島よりも強かった家に強要され、紀一は後妻を迎えた。


その女の名が、黒田美喜子。


我が儘、高飛車、自分勝手なお嬢様。


自分の言い分を無理矢理にでも通そうとする、妃とは真反対の人間。


そして、妃の生前の友人……。


「何でよ……っ!」


常に、怒鳴っている人だった。


自分の意思が、うまく通らないから。


雷紀は、そんな美喜子を蔑んでいた。


母親と認めたこともなく、呼んだこともなかった。


そして、雷紀が20の頃。


妃を失ってから、病を患っていた紀一が逝去した。


すでに、雷紀の祖父母も他界しており、藤島には美喜子と雷紀だけが残された。


そんな、ある日。


「初めまして、お兄様」


一人の女の子が、名のない、女の子が雷紀の前に現れた。


純粋で、素直で、何も知らない14歳の少女。


雷紀はその少女に多くの幸せを願い、『多喜子』と名付けた。


二人は、常に一緒にいた。


本当に、ずっと、一緒に……


それが、気に入らなかったのか。


美喜子は、多喜子を男達に売った。


逆らうすべのなかった多喜子は、潰された。


全身、火傷の痕。


白い肌には目立つ、深い傷。


すべて、美喜子と男達につけられたものだった。


そんな絶望を生きる多喜子を救おうとすれば、金を使い果たし、藤島を傾ける美喜子……。


最悪の固まり。


その他の言い方が思い付かなかった。


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