【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「私じゃなくて、何で、あんたが……っ!!」


どうやら、全ては雷紀が冷たいのが原因だったらしい。


紀一に似た容姿の雷紀に否定されることは、美喜子の矜持が許さなかったらしく……雷紀が何よりも大切にする多喜子を傷つけることで、逆らわないようにしていた。


それが、不愉快だった。


しかし、雷紀は結婚する手はずになってしまった。


それもすべて、美喜子の傾けた家を守るため。


それだけで。


雷紀は、愛せなかった。


迎えた妻のことを。


「俺は、お前を愛せない」


そう、はっきり伝えると、相手のセイラは笑ったそうだ。


「構いません。私は、私の幸せを見つけますから……」


セイラは、ハーフだった。


金色の髪に、青い瞳。


多喜子と重ねることはできず、胸が痛むのと同時に、ホッと、安心もしていた。


多喜子は、雷紀によって匿われ、美喜子の手が出せないところの病院に入れられた。


けれども、多喜子の精神状態は異常を越え、壊れていた。


虚ろな目。


急な、発作。


雷紀はそんな多喜子に申し訳なさと愛しさを感じ、愛してた。


愛し合っていた。


二人は。


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