【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「あんたは、何がしたかったんだ?」
そう問いた雷紀に、美喜子は笑って。
「愛されたかった」と、言った。
彼女は気づいていたのか。
どれだけ足掻いても、紀一の中にいる妃を……愛妻を消せないことを。
雷紀は、限界だった。
だから、自らの手で、美喜子を消した。
全ての恨みは、自分に来るように仕向けた。
それが、一番だと。
おかしいと言った多喜子を、もとの場所に閉じ込め、雷紀は悪役を演じた。
孫達に、恨まれるように……。
そして、アイラの砕け散った心を癒すため、アイラが二番目に慕っていた雅弘を宛がった。
それだけでも、雷紀は悪役に見えたことだろう。
雅弘はアイラの心を癒し、アイラは子を生んだ。
それが、心優。
心優しいアイラのような、ユイラのような、朝陽のような、妃のような、多喜子のような……
そんな、女の子になることを願って。
正直、ユイラのことは、何も知らなかった。
それでも、かつて信頼していた右腕に任せれば、大丈夫だと信じてた。
父親失格だと分かっていても、今更……ユイラの心を抉るだけだ。
藤島雷紀は、悪者なのだから。
絶対的悪は、大きな傷を残した。
それを消すのは、悪役の雷紀だけで十分…………。