【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「――お兄様はそう考え、悪役を演じ続けました」
多喜子さんが話し終えると、祖父は項垂れていた。
もう、何も言わないというように。
「……多喜子、お前、どうやって抜け出してきたんだ?簡単には無理なはずで…………ああ、愚問だったな。沙耶がいるということは、相馬さまが……御園がついているんだ。お前を連れ出すくらい、簡単だな……」
遠い目をする、藤島雷紀。
すべてを一人で背負ってきた人。
「お兄様、わたくしをもう、守らないでください。わたくしは、お兄様と歩みたいんです。もう、わたくしを遠ざけないで」
お互いが、お互いを庇い、ここまで生きてきた。
悪に成りきらねば、呼吸のできなかった祖父。
そんな祖父を案じつつも、何もできなかった多喜子さん。
二人が寄り添う姿は、勿体無いくらいに立派な夫婦で。
「……歩めたら、良いんだがな」
俯いて、呟く祖父。
そうだ、この人は美喜子さんを殺した。
その罪に苛まれながらも、この人は悪役を演じた。
――なんて、素晴らしい俳優か。
この人が美喜子さんを殺さなければ、恐らく、犠牲はまだで続けていたはずだ。
この人は、祖父は、自分の身と引き換えに、それを防いだ。