【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「……出頭、なさるおつもりですか?」


「そうしなければならぬだろう。これは、私が犯した罪なのだから」


この二人は、幸せに慣れるだろうか。


例え、許されない愛だったとしても。


私たちが許せば、愛し合えるだろうか。


「……お祖父様」


私は、祖父に歩み寄った。


すべてを知り、このままではいけないと思ったから。


「……なんだ」


「お祖父様は、朝陽を殺していないと言いましたね?なら、美喜子さん以外に殺しましたか?」


「…………手に、かけてはいない。だが、殺したと言えば、殺したことになるんだろうな。美喜子の企みを、防げなかったのだから」


「……その人の名を、覚えていますか?」


「…………松山、久貴。健斗の幼馴染みで、優秀な医者として有名な男だったな。最期は……あの工事現場で、集団攻撃に遭い……骨が折れ、肋骨が肺に刺さっていたと聞いている。それによって、死したとも。私は、彼を助けることができなかった。助けてあげられるのは、私しかいなかったのに…………すまない、沙耶」


勇兄ちゃんの、お父さんの最期。


骨で発見された彼は、大切に結婚指輪を握っていた。


そんな彼のことを、この人は20年間、忘れていなかったのか。


「……お祖父様は、悪くありません」


そう、悪くない。


彼は自分の正しい判断というものを追い求め、そう、決断したのだから。


逆に、お礼を述べたい。


久貴の最期を、覚えておいてくれたことを。



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