【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……相馬から、すべて聞きました」


そんな四人から目をそらすと、祖父の前で、父さんと母さんと多喜子さんが、お祖父様を囲むように集まって、話していた。


「俺としたことが騙されました。なんですか、すべて、作戦だったんですね」


「……」


「誤魔化すためなら、そう言えば良いのに……」


「言って、どうなる?お前まで巻き込まれたりしたら、俺は、もう……」


信頼関係。


流石、元上司と部下。


この二人をセットで見たのは初めてだが、なんだ、こう見ると、祖父は悪い人には見えない。


人のことをこんなにも優しい瞳で見ているじゃないか。



「お前は俺の右腕として、立派に勤めあげてくれた。だからこそ、アイラを任せたわけだが……そんなアイラと朝陽の関係を取り持ち、おまけに大樹をあんなにも立派な男に育て上げたことに感謝している。図らずとも、ユイラを見つけ、愛してくれたこともな」


祖父がそう言うと、父さんは眉間に皺寄せて。


「アイラとの偽造結婚したことや、朝陽をかばっていたことは百歩譲って、貴方の思惑通りとしましょう。……けど、ユイラの愛したことは貴方の指示ではありませんし。それだけは、絶対に譲りませんよ」


父さんは隣にいた母さんの手を握り、


「ユイラを愛したのは、俺の意思です。貴方の命令じゃありません」


愛情深い目で、母さんを見つめた。


それで頬を染める母さんもどうかとは思うが、それを見慣れてしまっている自分もどうかと思う。

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