【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


そんな二人に当てられたのか、祖父は和やかに微笑んで。


「そうか……それで生まれてきたのが、沙耶か……いい娘を持ったな」


「ユイラの子供ですから。当然でしょう?」


「つまりは、セイラ似か……あいつは、素晴らしい女だったもんな」


事実上、私の祖母に当たるセイラさんは、母さんと共に美喜子さんの目を掻い潜っている最中、母さんを守り、亡くなった。


その後、母さんは藤島の所縁のこども園に預けられるのだが……母さんの様子を見に来る口実だった、アイラの訪問が母さんを苦しめていたことなんて、祖父は思いにもよらなかっただろう。


今だ、父さんや身近な人間以外の男性を怖がる母さんは、自分を捨てたと思い込んでいた父親に歩みより、


「……今度、お母様の御話を聞かせてください」


と、言った。


祖父は一瞬、目を見開き、静かに頷く。


「……多喜子と同じ思いをさせて、悪かった」


皆で、笑い合う。


こんな日が来るなんて、誰が想像したことだろう。


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