偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「はい、後ろ向いて」
光一さんは私の体を半回転させ、自分は背後に立つ。私の体からするりとトレンチコートを
脱がせると、ワンピースのファスナーに手をかけた。
「え? あの、自分で……」
「いいから」
ファスナーがゆっくりとおろされ、むき出しになった肩やうなじに少し
ひやりとした空気がふれる。
なんだかやけに緊張してしまって、体が強張る。

光一さんの腕が私のウエストに回り、ぎゅっと体を抱き寄せられる。
「きゃっ」
光一さんの唇が私の首筋をなぞった。
「柔らかくて、綺麗な肌。こういうのは出し惜しみしたほうがいいんだよ。知らない男に
見せてやる必要なんてないから」
低く艶のある声と触れている唇の熱で、私はのぼせてしまいそうになる。

「デートってなにも外に出なくてもいいよな。家でゆっくりのほうが夫婦仲は深まる
んじゃない?」
「えっ…えぇ?」
慌てふためく私を見て、光一さんはクスリと笑った。
「冗談だよ。さすがに朝っぱらからどうこうするほど若くはない」

光一さんの選んでくれたサマーニットと色を合わせて、ピンクベージュのパンプスを履いた。
派手に巻きすぎた髪は低めのポニーテールでカジュアルダウン。
「うん! 私にはこれくらいがちょうどいいかも」

午前中は光一さん希望の図書館、ランチを食べて、午後からは私のリクエストで映画鑑賞というのが今日のデートプランだ。







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