偽装新婚～イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない～

桜の季節は終わってしまったけれど、穏やかな日差しが心地よい絶好のデート日和だ。
日曜日だけあって、街は若いカップルや家族連れでにぎわっている。みんな、とても幸せ
そうに見えた。

私と光一さんも幸せなカップルに見えているだろうか。どう贔屓目に見てもお似合いとは言えないから、会社の同僚ってところだろうか。
私はそんなことを考えながら、光一さんの少し後ろを歩くいていく。
付き合っていた頃の彼は、私の歩調に合わせ『手、つなごうか？』なんて優しい言葉をかけて
くれていたけど……。
今日の彼は自分のペースでどんどん先へと行ってしまう。私はいつもより速く歩かないと、あっという間にその背中を見失いそうにななる。

でも、きっとこれが光一さんの素のままの姿。ありのままの彼を知りたいと望んだのは
私だ。
ふと、光一さんが立ち止まり、こちらを振り返る。
「悪い。歩くの早いか？」
「全然、大丈夫！」
私は笑顔で答えて、彼に駆け寄った。

本当の光一さんがどんな人なのか、ホワイトな面もブラックな面も全部教えて欲しい。
そのうえで、やっぱり彼が好きだと、夫婦でいたいと思えるのか。
光一さんは私のことを好きになってくれるのか。

私たちの関係はスタート地点にたったばかりだ。ゴールがどこにあるのかすら、まだ
見えていないけれど、それでも走ってみよう。私はそんなふうに思った。