偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
喧嘩したいわけじゃない。だけど、もう止まらなかった。

「光一さんこそ、いままで誰とどこにいたの? あの嫌がらせだって、誰のせいなの?」
「……なんの話だ?」
「女の人といたの、知ってるよ。うちへの嫌がらせだって、きっとその人が犯人だよ」
「ちょっと待て。誤解してるのはどっちだよ」
光一さんは戸惑ったように言って、表情を曇らせた。ほんの少し前と立場が入れ替わったような状態だ。
ついさっき、自分の話を聞いて欲しいとあんなに思っていたはずなのに。いま、私は光一さんの話なんて、聞きたくないと思っている。

なんてワガママなんだろう。

「もういいよ!私、しばらく帰らないから!光一さんは、あの人と赤ちゃんと、仲良くしててください」

私は吐き捨てるように言って、その場から走り去った。
呼び止める光一さんの声を背中で聞いていたけれど、一度も振り返らなかった。





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