偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
どこへ行けばいいのか、なにをしたらいいのか、もうなにも考えられなかった。結局、助けを求めた相手は悠里だった。
客間に敷かれた清潔なお布団の上で、私がぼんやりしていると、襖が開き悠里が顔をのぞかせた。
「ホットチョコレート、作ってきたよ。一緒に飲まない?」
悠里の持つお盆にはマグカップがふたつ、のせられていた。
「……ありがとう。りりちゃんは大丈夫?」
「うん。最近は夜はぐっすり寝てくれるのよ。ちょっと前までは30分起きに泣いてたのにね。赤ちゃんって不思議よ」
悠里は優しげな笑みを浮かべた。お母さんになった悠里は、昔よりずっと綺麗だ。
「そっか、よかった」
「はい、どうぞ」
差し出されたマグカップを受け取って、そのまま口へ運んだ。
優しい甘さに、心がほどけていくのを感じた。
「あぁ、美味しい」
「いま、お酒は飲めないからさ。私もリラックスタイムはこれなのよ」
「ふふ。酒豪だったくせに、すっかりいいママになっちゃって」
(それに比べて、私は……なにやってるんだろう)
情けない気持ちでいっぱいになる。
私はうつむき、唇を震わせた。そんな私を見た悠里が、よしよしと頭を撫でてくれる。
ますます涙があふれてきて、止まらなくなる。
「ほんと〜にごめんね。赤ちゃんがいるのに、こんな時間に押しかけて」
「いいの、いいの。親友なんだから、ほんとに困った時は頼ってよ。うちの旦那、出張ばっかりでほとんどいないしさ、好きなだけ泊まっていって」
「悠里〜」
私は悠里に抱きついた。
「もちろん、タダってわけにはいかないわよ。夕飯作りはあんたの担当ね」
「もちろん作らせていただきます。朝ごはんも作るからね」
「ついでにお風呂掃除も頼んだ!」
その夜は、たまった鬱憤を悠里にさんざん聞いてもらって、そのおかげか、すんなりと眠りにつくことができた。
一時的ではあるけれど、あの嫌がらせの恐怖も忘れることができた。
客間に敷かれた清潔なお布団の上で、私がぼんやりしていると、襖が開き悠里が顔をのぞかせた。
「ホットチョコレート、作ってきたよ。一緒に飲まない?」
悠里の持つお盆にはマグカップがふたつ、のせられていた。
「……ありがとう。りりちゃんは大丈夫?」
「うん。最近は夜はぐっすり寝てくれるのよ。ちょっと前までは30分起きに泣いてたのにね。赤ちゃんって不思議よ」
悠里は優しげな笑みを浮かべた。お母さんになった悠里は、昔よりずっと綺麗だ。
「そっか、よかった」
「はい、どうぞ」
差し出されたマグカップを受け取って、そのまま口へ運んだ。
優しい甘さに、心がほどけていくのを感じた。
「あぁ、美味しい」
「いま、お酒は飲めないからさ。私もリラックスタイムはこれなのよ」
「ふふ。酒豪だったくせに、すっかりいいママになっちゃって」
(それに比べて、私は……なにやってるんだろう)
情けない気持ちでいっぱいになる。
私はうつむき、唇を震わせた。そんな私を見た悠里が、よしよしと頭を撫でてくれる。
ますます涙があふれてきて、止まらなくなる。
「ほんと〜にごめんね。赤ちゃんがいるのに、こんな時間に押しかけて」
「いいの、いいの。親友なんだから、ほんとに困った時は頼ってよ。うちの旦那、出張ばっかりでほとんどいないしさ、好きなだけ泊まっていって」
「悠里〜」
私は悠里に抱きついた。
「もちろん、タダってわけにはいかないわよ。夕飯作りはあんたの担当ね」
「もちろん作らせていただきます。朝ごはんも作るからね」
「ついでにお風呂掃除も頼んだ!」
その夜は、たまった鬱憤を悠里にさんざん聞いてもらって、そのおかげか、すんなりと眠りにつくことができた。
一時的ではあるけれど、あの嫌がらせの恐怖も忘れることができた。