偽装新婚～イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない～

翌朝。私は悠里の家から出勤し、いつも通りに業務をこなしていた。
仕事をしている方が、平常心を保っていられる気がする。

胸ポケットにしまったスマホが、チカチカと光を発してその存在をアピールしてくる。まるで『無視するな』と言われているようだ。

画面を確認するまでもなく、相手はわかっている。

（きちんと話をすべきなのはわかってるけど……どうしてもモヤモヤする！自分のことは棚にあげて、松島さんとの仲を疑うって、なんなのよ）

話し合うべきという理性と、怒りの感情がせめぎあい、最後は感情のほうが勝ってしまう。

（とはいえ、悠里の家にお世話になるのももう一日くらいが限度よね。通勤が死ぬほど大変だけどやっぱり実家かな〜。けど、小姑がいすわったら舞子ちゃん（弟嫁）も嫌だろうしなぁ）

実家は弟夫婦との二世帯住宅にリフォーム済みなのだ。そのため、実家も長くは世話になれない。