恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「大丈夫……ですか?」

心配になって、雅臣先輩に一歩近づく。

すると、それを制すように手の平を前に出す。


「力になれたみたいで……よかった」


良かったというわりには、反応が薄い。

雅臣先輩の事だから、もっと嬉しそうに言ってくれると思っていたのに、私の期待とは正反対の顔をしていた。

そして、消え入りそうな声で「でもきっと、清奈を救ったのは……」という彼の呟きが風に乗って私の耳に届く。

「雅臣先輩……?」


目の前の雅臣先輩が、茜色の光に霞んでしまうような錯覚を覚える。

彼の存在をつなぎ止めなくては。

そう思ったら、咄嗟に手を伸ばしていた。


「清奈……?」

「あっ……すみません、つい」


気づけば、雅臣先輩の手を握っている自分がいる。

そんな突発的な行動に出た自分に戸惑いながらも、その手を離せない。

それどころか、どんどん強く彼の手を握りしめている。

どうしても、この人を引き留めなくちゃいけない。

なにからかはわからないけれど、そんな思いに駆られて、考えるより先に体が動いていた。

< 130 / 226 >

この作品をシェア

pagetop