恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「あ、待って!」
引き留める雅臣先輩の声が背中に投げられる。
それに一瞬足を止めてしまいそうになったが、そのまま走った。
立ち止まって、君が私を忘れた事実に傷つくのが嫌だった。
だから私は大好きな君から逃げる。
結局私は……現実を受け止めきれない弱い人間なんだ。
走って走って、たどり着いたのは【櫛田(くしだ)神社】というこじんまりとした古い神社だった。
手入れしている人がいるのか、いないのか。石段には枯葉が積もっており、社にもクモの巣がかかっている。
私は汚れるのも気にせず、社の前にある石段に座り込むと、お母さんのフリをして高校に休みの連絡をした。
「サボっちゃった……」
私は空から落ちてくる雨粒を全身に浴びる。
制服はとっくにびしょ濡れだったから、雨宿りはしなかった。
今はただ、この雨が悲しみ全てを洗い流してくれればいいのにと思う。
「もう、わけがわからないよ……」
頬を伝うのが涙なのか、雨なのか。
もう、その境すらわからない。
心も体も冷えきっていて、世界に自分ひとりしかいないみたいに心細くなる。
私の居場所だと思っていた人は、もうどこにもいないのどろうか。
私はいったい誰を好きだったのだろう。
恋心が誰に向けて生まれたモノなのか、わからない。