恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「誰かいますかー……」
縋るような思いで開いたのは、【古典研究部】の部室の扉だった。
今は昼休みなので、会いたい人がここにいるかはわからない。
なので一か八かの賭けで、私は声をかける。
「ん? あぁ、清奈か」
どうやら、私は賭けに勝ったらしい。
焼きそばパンをほおばりながら、軽く手を挙げてくる彼に思わず頬が緩む。
「あ……雅臣先輩」
よかった、雅臣先輩に会えた……。
その姿を瞳に映した瞬間、涙ぐみそうになった。
急に泣きだしたら、先輩が心配する。
そう思った私は必死に堪えて、部室の中央にある長机まで歩み寄ると、雅臣先輩の目の前に腰掛けた。
「雅臣先輩、どうしてここでご飯食べてるんですか?」
会いたいと思っていた人に会えて、胸が高鳴っている。
けれど平静を装うのは、素直に会いたかったと言うのに恥ずかしさがあったからだ。
「俺、昼ごはんはここで食べてるんだ」
「友達いないんですね……」
「おいおい、それは酷くないか?」
カラカラと笑う雅臣先輩につられて、私もようやく笑うことが出来た。
不思議だな……。
同じ空間に先輩がいるだけで、なんでこんなにも安心するんだろう。