恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「与えられた将来が嫌なわけじゃない。けど、好きなわけでもないんです」


医者になりたくないわけじゃない。

でも、なりたいわけでもない。

気持ちはハッキリしていて、迷うのとは少し違うかもしれない。

けれど、ふたつの矛盾した心を前に、決められた道を進むのを躊躇っている。


「どっちつかずのまま、先に進むことが怖い……」


本当にこれで、あってるのかなって。

このまま言われた通りに生きて、私は後悔しないのかなって。

雅臣先輩は何も言わずに、私の話に耳を傾けてくれている。

変に相づちを打たれるより、沈黙の方がずっといい。

受け入れられてるように感じて、どんどん自分の気持ちを話せるから。


「だからと言って私自身、何を望んでいるのかもわからないんです。それで時々、自分が一体何者なのかがわからなくなってしまって……」


最初から諦めてしまうのは、何かに関心を向ける前にどうせ親の許可が下りないだろうと思ってしまうから。


「だから自由になれば、答えを見つけられる気がするんです」


すべてのしがらみを解き放てば、もっと自由な考え方ができるんじゃないかと思う。

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