恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「その……在田先輩って人、進路希望調査票に【くそくらえ!】って書いてたんです」
勝手に他人のことを話すのは躊躇われたが、自分ひとりで考えるには荷が重い。
それに、雅臣先輩は他人の秘密を面白おかしく話すことは絶対にしないはずなので、信じて話すことに決めた。
「それは……とてもじゃないが、提出できないな」
雅臣先輩の言う通り、先生にきっと突っ返されるだろうな。
そう思った私は苦笑しながら「確かに」と頷く。
「それで、これを見てどう思ったんだって聞かれて……。在田先輩は嫌なら逃げられる道を歩いてるんだから、そんな子供みたいに反抗するな! 的なことを言ってしまいまして……」
「あぁ、それで怒らせたと?」
「はい……」
ついに、できれば黙っていたい自分の汚い部分を話してしまった。
それを聞いて、雅臣先輩はどう思ったかな……。
不安な気持ちで彼の顔を見つめながら、返事を待っていると──。
「清奈は、自分で自分の翼をもいでいる」
「え……?」
翼を……もぐ?
やっぱり雅臣先輩は不思議なことを言うんだな。
彼の言葉は、たくさんの謎とロマンチックさに溢れてる。
それはまるで、歌に秘めた想いを探るようで、和歌そのものだと私は思っていた。
そういう時、私はいくら自分の頭で考えても彼の言いたいことを悟ることはできない。
なので、潔く意味を問うように「翼をもぐって?」と聞き返す。