恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「例えば、事故で片腕を失ったとする」

「はい……」

「その腕をもう一度生やすことは、トカゲでもないかぎり無理だろう?」

「それは……まぁ、そうですね」


極端だなと思いつつ、話の腰を折るのも申し訳なかったので私は首を縦に振る。


「でも、それ以外のことなら人は何でもできるんだ」


どういう……こと?

私はまだ、雅臣先輩の言いたいことが理解できない。

体があったって、出来ないことはあるだろう。

私が両親の期待を裏切れず、それ以外の将来を考えられないように、生まれた場所や両親の想いによって望むように生きられない人もいると思う。


「命と体さえあれば、あとは想いひとつで変われる」

「そんなの……ただの理想ですよ。現実は誰かの期待に答えなきゃいけなかったりして、想いだけではどうともならないんです」


現実はそんない甘くない、雅臣先輩が言ってることは綺麗事だ。

だってそれが本当なら、私は今こんなに悩んでいない。

なんて、自分で言ってひどく胸が締め付けられた。

毎日が顔だけ海に浸かっているみたいに、息苦しい。

こんな人生を変えられるなら変わってほしいと思うけれど、それは生まれた環境を変えなければ無理だ。

つまり、命が母親のお腹に宿った段階で、その子の未来は決められてしまっているってこと。

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