恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「でも俺、自分の力を過信しすぎて勉強もサラッとしかやらなかったせいで、受験に落ちたんだ」
じゃあ、ここは滑り止めに受けたってことかな。
でも、彼の苦しみは私にも理解できる。
この学校を受けるのに、両親からどれだけ反対されたかわからない。
ようやく納得させてここに入学できたけれど、今も根に持っているのか、ネチネチ話題に出してくる。
「そうだったんですか……」
相槌を打った私の声も、思わず沈んでしまう。
そんな私の背中に、雅臣先輩の手が当たる。
振り向けば、優しく見守るような眼差しが向けられた。
本当に、この人は人の痛みに敏感だ。
傷口にそっと薬を塗るように、彼の優しさはさりげなく心を癒していくから不思議だ。
私は“ありがとう”を込めて笑みを返すと、在田先輩の話に耳を傾ける。
「それから、親も兄貴も俺を虫けらを見るみてぇに態度も冷たくなって……まぁ、こんなんになったわけ」
そう言った在田先輩は、自分の金髪を指さして自嘲的に笑う。
在田先輩の葛藤が、その姿には現れていた。
期待に沿えなかった在田先輩を家族がどんな目で見たのかは、私にも想像できた。
私も……自由に生きたいと言ったら、両親に蔑まれるのかな。
あの家が、もっと息苦しい場所に変わってしまうのかもしれない。
そんな不安がこみ上げてきて、胸を締め付ける。
「だからこの進路希望調査票を配られたとき、俺には未来なんてないのにって苛立って書いたんだよ」
未来がないのに……か。
私には将来【医者】になるという道が用意されているのに、在田先輩と同じように未来なんてないように思える。
それはきっと、私が心からそうなりたいと願っていないからかもしれない。