恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「それを見た担任に職員室に呼び出されて、「ふざけてんのか!」って突っ返されてさ」
教師がなにも知らないで私たちを叱るのは、生徒を『個』として見ないからだ。
『集団』として見れば、在田先輩はただの不良生徒でしかない。
でも見方を変えたら、雅臣先輩のように、その人の内面に隠している孤独や痛みに気づけるはずなんだ。
「あの日ぶつかった時に、在田先輩が急いでたのって……」
「あぁ、ちょうど職員室飛び出して、やけくそに走ってたところだった」
そんな辛い時に、私たちは出会ってたんだ。
だけど私はそんなことも知らないで、在田先輩の存在を気に止めることもなかった。
そう結局、世界ってこういうものなんだ。
みんな自分のことで必死で、他人に目が向けられるのは一部の恵まれた人だけ。
お金とかそういうんじゃなくて、やりたいことを思う存分に出来ていたり、誰かを心から愛せていたり、心が自由で豊かだから、他人を気遣えるんだと思う。
言わないだけで悩みを抱えている人は、たくさんいる。
それに気づける自分になれたらいいとは思うけど、私はまだ自分のことで精一杯の未熟な子供だから……。
それでも少しでも理想に近づくために私が出来る事と言えば、君だけじゃないって伝えることくらいだと思う。
「私は……両親から医者になるようにって、言い聞かせられて、ここまで生きてきました」
「…………」
在田先輩は何も言わずに、私をじっと見つめている。
そうして誰かに見られながら話すのは、少し緊張するけれど、聞こうとしてくれている彼のためにも頑張らなくてはと思った。